福岡県福岡市にある「望月眼科」は、厚生労働省の各特掲診療料の施設基準に適合した医療機関で、白内障手術やレーシック、ICLなど様々な日帰り手術に対応し、福岡都市高速野多目インターから車で約5分という立地から県外からも数多くの患者さまが訪れる眼科。
今回は望月眼科の医療事務 源五郎丸さまに搬送ロボット導入の経緯や活用方法についてお話を伺った。
カルテ運搬の負担が診察業務を圧迫
源五郎丸さま「当院では電子カルテを導入しておりますが、電子カルテとは別で、検査項目チェックリスト等が記載されたA4のカルテがあり、そのカルテの運搬をロボットにお願いしています。
カルテは受付で発行され、患者さまに合わせて各検査室や診察室を移動し、最終的に私たち医療事務(シュライバー)が診察室から会計カウンターへ運ぶ必要があるのですが、この運搬が大変と以前からスタッフ間で話していました。
当院では1日200名ほどの患者さまが来院し、特に院長の診察では3時間で50名以上の患者さまが来られているので、3分ごとに1名の患者さま対応となります。各診察室には医師の補助を行う医療事務が1名ずつ配置されており、診察中は医師と患者さまの会話を聞きながらカルテを入力する必要がありますが、会計カウンターまでカルテを運んでいる間に次の診療が終わってしまっていたり、会計カウンターになかなか運べずカルテが溜まってしまい『誰かカルテを持っていってー!』と呼びかけする状況でした。」
スタッフからカルテ運搬の負担軽減について話していたところ、院長の望月さまがYouTubeで搬送ロボットの動画を見つけたと言う。
源五郎丸さま「回転寿司のレールのようなものも考えましたが、現実的ではなく、ロボットなら実現できるのではないかということで、まずはデモからスタートしました。
DFA Roboticsさんから小型タイプのロボットを2種類お持ちいただき、T8が適していました。通路が狭いのでスタッフとのすれ違いを当初心配しておりましたが、実際の運用では問題なく業務に組み込むことができました。カーテンなどの影響で止まってしまう場所が1箇所だけありましたが、DFA Roboticsの担当者さんに細かく調整を行っていただき、スムーズに通ることができました。」
カルテの滞留を解消し、診察・会計の待ち時間が削減
搬送ロボット「KEENON T8」は、5番診察室を待機位置として、各診察室と会計カウンター間でカルテを運搬している。呼び出し式ではなく、「KEENON T8」が常に巡回し、診察室にきたらカルテを置くという運用だ。
源五郎丸さま「以前はカルテ運搬のために診察記録を中断しないといけなかったり、滞留しているカルテのことが気掛かりでしたが、ロボットに任せることで診察に集中できるようになりました。診察終了と同時にカルテを完成させることができるので、次の患者さまをすぐに案内できますし、会計カウンターにすぐカルテを運べるので会計の待ち時間短縮にもつながっています。受付〜診療〜会計までの全体の処理速度が上がっただけでなく、立ったり座ったりの動作もないので身体的負荷も軽減されました。
また、カルテが入ったクリアファイルに、この患者さまは次はメガネの処方、もしくは会計など、次の対応を表す色付きの棒を入れるのですが、以前は棒がなくなったら取りにいって補充していたのが、ロボットに棒が入った箱を取り付けて運搬しているので補充の手間も省かれました。
人とロボットの共存による新たなチームワーク
「KEENON T8」は愛称「シロゴマ」と名付けられ、スタッフからも親しまれているそうだ。
源五郎丸さま「デモで来た時からスタッフは『かわいい!』と反応し好評でした。デモが終了し一度帰ってしまった時には『いないと寂しいね』とロボットの存在が当たり前になっていました。本導入した際に名前をつけて『シロゴマさま』「ゴマちゃん』などと呼んですっかり院内になじんでいます。
機械が苦手なスタッフもいますが、操作は問題なく簡単に使えています。患者さまの反応も上々で、診察中にロボットを見かけると特にお子さんは喜んでくれます。
分院でもロボットを活用し、業務効率化を目指す
源五郎丸さま「当院では以前から、業務効率化のためにデジタル技術の導入に積極的に取り組んできました。電子問診票の導入や、スタッフ間の情報共有にチャットワークを活用するなど、常に新しい技術を取り入れています。最近では専任のIT担当者も配置し、教育用の動画マニュアルをドロップボックスで共有も行っています。
今回は新たに搬送ロボットを導入しましたが、スタッフの業務負荷削減、業務に集中できる環境づくり、待ち時間の削減という効果が生まれました。来年春にオープンする分院でも、同様にロボット導入を予定しています。
医療機関も人手不足でなかなか採用が厳しいと思いますが、幸いにも当院は応募が多い方だと聞いています。
今後もデジタルツールの導入によって、働きやすい職場環境づくりや、患者さまの利用満足度向上を目指していきたいです。」